陽は、傾き水平線の彼方に沈みかけあの華やかだったビーチに打って変わって人が集まり始めていた。浜辺には、こんなにここに人がいたのかと思ってしまうほど人で埋め尽くされていた。警備の人が、忙しげに動き会場のほうでは花火の打ち上げ作業が続いている。小さなステージは、このイベントのために立てられたものだ。浜辺に来ているのは、カップルや家族連れが主だった。 「クラウド」 「行かなくて、よかったのか?」 クラウドが、ベランダの手すりにもたれかかってくすくす笑う。中庭では、ダイアナたちがバーベキューの用意をし始めている。ザックスは、一度あれから戻ってきてシャワーを浴びて着替えるとあの二人と約束していると出て行ってしまった。その時一度一緒に来るか?と誘ったがクラウドは首を振るだけだった。 「なんか、1年って早いね」
今年の今ごろ、母さんに内緒で受けたテストの通知がきてて年あけたときに、母さんに初めて、ミッドガルに行きたいって切り出したんだっけ その頃は、まさかあの神羅の英雄とこうしているなんて考えても見なかったな それに、セフィロスは周りから言われているような人じゃなかったよ それに、たくさんの友達や知り合いが出来たんだ
海風の涼しい風に金髪の髪をなびかせながら陽が沈み行く水平線を見つめている。浜辺からだいぶ離れているのに、ここまで人のざわめきが届きそうだ。日焼け止めクリームを塗っていてもクラウドの鼻の頭と頬が少し陽に焼けている。 「この程度なら、すぐ引いてしまうか」 「何がだよー」 「いや、なんでもないさ」 下から、準備できたとダイアナが声をかけてくる。 何故か、ちょうどいいタイミングを見計らったかのようにザックスが戻ってきた。片方の手には、缶の入った袋を吊り下げて。中身は、ビール。 「クラウド用にも買ってきたんだぜ。ジュース」 「ありがと」
わいわいバーベキューを楽しみ、三人はシャワーを一度浴びた後、二階のベランダに場所を移す。二人は、水割り。クラウドは、オレンジジュース。 「クラウド、鼻の頭赤いぞ」 「うるさい、どーせ俺は日焼けしないよ!」 ザックスが、今何時だと腕時計を見る。 pm11:45 「色々あったな」 「ああ」 「クラウド拾ったり、誘拐されたり、されそうになったり」 「悪かったな!!」 セフィロス、肩を揺らして笑っている。
旦那が笑うようになったのだって、こいつが来てからだ ほんと、お前は凄いよ 俺は、「相棒」でしかなれなかったけど お前なら
満天の星空が、瞬いている。 幾ら季節がミッドガルと逆とはいえ夜は冷える。セフィロスは、クラウドにスウェットカーディガンを羽織らせた。 「もうすぐで、今年終わっちゃうんだ」 「俺は、今までそんな事すら無意味だと思っていたが…」 「クラウド来たら、そんな事思わなくなったでしょー」 セフィロスが、照れ隠しにザックスを睨むがクラウドの方は、もう茹蛸状態である。 「もうすぐで、始まるぜ」 「うん」 浜辺からの騒音は、ここにはかすかにしか届かない。 クラウドは、夜空を見上げる。
かすかに聞こえてくるマイクの声に耳を傾ける。 ザックスは、腕時計を見ている。
「始まるぜ」
10 9 8 7 6 5 4 3 2 1
A Happy New Yere!!
同時に、夜空に花火が幾つも打ちあがり綺麗な大輪を咲かせては消えていく。
「あけましておめでとう!」 クラウドは、ザックスに抱きついて言葉を交わす。 「ああ、おめでとう」 クラウドは、ザックスから離れてセフィロスに抱きついた。 「セフィロス…あけましておめでとう」 「ああ」 「俺、二人にあえて嬉しかった。こんなに、嬉しい事なかったんだ…」 セフィロスとザックスがクラウドの頭を撫でる。 「クラウド」 「何?」 セフィロスは、抱きついていたクラウドを離し自分の腕に包み込んで 「クラウド…」 クラウドは、セフィロスの腕の中できょとんとセフィロスの顔を見上げている。 「お前さえよければ……」
なーに、ためらっているんだか 旦那 ほれ、行っちまえって言うの
「俺と…これから先、一緒に暮らさないか?」 クラウドは、固まったままだ。 「え…」 「俺じゃ、嫌か?」 クラウドは、ぶんぶんと頭を横に振る。 「信じられない」 「本当は、初めからそうするつもりだった。だがな…」 「クラウド、旦那はお前の事を心配したんだよ。それに、お前の気持ちもある」 クラウドは、交互に二人を見つめた。 「旦那の所がいやなら、俺ん所来るか?」 セフィロスが、余計な口を出すなといわんばかり睨みつけてくる。 「え…でも…」 クラウドは、セフィロスの顔を見た。 セフィロスの顔が、とても寂しそうに見えた。
ああ、この感じだったんだ。 いつも、ザックスを通してこの人を見たとき感じたのは 俺は一人だったけどそれでも母さんがいてくれた。 帰る場所があった。
でも
俺は、あなたにあえて本当によかったよ?
「俺でいいの?俺なんかで、いいのかな…?」 セフィロスは、クラウドの小さな身体をぎゅっと抱きしめた。 ザックスは、けらけら笑いながら持っていたグラスの中を煽る。
クラウド お前に出会えてよかった
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