なんか、昨日セフィロス機嫌悪かったなぁ… クラウドは、朝見送ったセフィロスが何時もより口少なかったのを気にしている。 ダイアナに、ケーキの作り方を教わりながら作っていたがどこか上の空だった。ダイアナが、くすくす笑いながら(ほら、手が休んでるわよ)とからかい慌てて、動かしている。何とか、ダイアナのおかげで形にもなったし綺麗に出来た。 「初めてにしては、上出来よ。クラウド」 照れて、頬を染めているクラウド。 ダイアナが用意した白いケーキボックスに丁寧に入れてラッピングしてくれた。 「ほら、待ち合わせ時間もあるのでしょ。シャワー浴びて用意してらっしゃい」 ケーキを冷蔵庫に入れて、クラウドをシャワールームに入れてしまう。ダイアナは、クリスマスカードの送り主がルーファウスだと、クラウドから聞いた。それって神羅の副社長の?と、思ったがどうもクラウドが彼の事を副社長だと気づいていない様子なので、黙っておいた。支度を整えたクラウドが荷物を持って出てきた。 「忘れ物は、無い?」 「うん」 ケーキの入った紙袋をクラウドに渡す。 「楽しんでいらっしゃい」 「はい」 クラウドを見送って、普段の仕事に戻るダイアナ。 「よう、子チョコボ、と」 待ち合わせ場所に現れたのは、レノだった。 「坊ちゃんは、仕事?中でこれないぞ、と」 「仕事終わってから、パーティだぞ、と」 レノは、クラウドの持っていた荷物をひょいと持つ。 「あっ…」 「何だぞ、と」 「それ…ケーキだから…」 レノが、白い紙袋をじっと見つめてからそっと持つ。 「子チョコボが、作ったのか?」 こくんと頷く、クラウド。 「さァ、車はこっちだぞ、と」 クラウドの乗り物酔いは、半端無い。レノもそれを知ってか、窓を全部開けてクラウドを助手席に乗せる。ケーキだけは、クラウドが大事そうに膝の上に抱え持っている。しばらく、レノが運転する車ら揺られてついたのは一軒の豪華な家だった。クラウドからして見れば、これが家なんだろうかと思えるほどの大きさである。広々とした庭の奥に白の大きな家が建っている。門が自動で開きレノはなれた感じでその中に車を進めていく。クラウドがせいぜい大きな家だなって思っていたのは、故郷の村長の家ぐらいだ。上がった事は無いが、母親と暮らしている家の隣なのだが、庭もあり広々とした感じがあった。それなのに、セフィロスのマンションをはじめて見た時に目を回したのに、ここはそれ以上に広いのではないかと、ぽんやりと眺めてしまっていた。 「ほれ、付いたぞ、と」 レノが、運転席から折りまわりこみ助手席の扉を開けてやる。ようやく車から降りて、ぼんやりとしているクラウドの頭をぽんぽんと二回叩くと荷物を持って玄関に鳴れた足取りで向かう。 「ほれ、何しているんだぞ、と」 「う…うん…」 クラウドは、慌てレノの後ろにくっついていく。レノが無造作に扉を開けて待っていたのは何人ものお手伝いに、ダークネィションがクラウドの匂いをかぎつけて走り寄って来る。レノにも苦手なものはあったのかダークネィションが駆け寄って来たとき身を1歩引いていた。ツォンは唸られるだけだが、レノやルードは吼えられるのだ。よく。ルードは一度噛み付かれていたな。だが、ダークネイションはクラウドを見るや否や、レノなぞ視界に入っていないという素振りでクラウドにすりより腹を見せている。 「動物キラーだぞ、と。子チョコボは」 回りのお手伝いさん達も、驚いてこの光景を眺めてしまっていた。レノは、クラウドを促しダークネイションを連れたまま一つの部屋へと入っていった。 「やぁ」 「えっと、レンさん」 レンは、ニコニコとクラウドに手を差し伸べ中に招き入れた。 会場は、熱気で溢れ返っていた。 広いホテルのパーティ会場の中注目を浴びているのは、神羅が誇るソルジャー達。しかも、1stクラスだけでみなきっちり第一正装の軍服を着込んでいる。その中でひときわ目立っているのは総隊長のセフィロスだった。社長と副社長の挨拶がようやく終わり、パーティに参加した人達はその後ろにぴったりと警護のためとして寄り添っているセフィロスとその副官のザックスが並んでいる。一見セフィロスの表情は動かない。ザックスから見れば、不機嫌極まりないのだが他の人間にはそれが判らない。他のソルジャー達は、ご馳走を皿に分けて貰いながら、警護には何だかんだと言いながら怠らない。 「…総隊長、早く帰りたいんだろうなぁ」 「ああ、子チョコボが作ってくれる美味しい夕飯が待ち遠しいんだろ?」 「いや、アレックスからの報告だとこの後個人的にパーティがまだ残っているそうだぞ」 リークたちが、触らぬ神に祟りなしとばかりに離れてぼそぼそ言っている。 社長と副社長が自慢げに二人を後ろにつけながら、彼方此方の客と話をしている。「正宗」はミニマムをかけて携帯はしているが横にいるザックスは、内心ミニマムだろうがこの二人を切り刻むんじゃないかと思うぐらいセフィロスの機嫌は悪かった。まぁ…機嫌の悪い原因の金髪頭が、目の前にあるしな。ようやく、社長と副社長の「練り歩き」が終わって二人が「失礼する」とひっこんんだあと、セフィロスもザックスも会場から逃げ去るように下がってしまった。他の1stソルジャー達には、この後の予定は特にソルジャー部隊が出動要請が無い限り待機と言い残し去っていってしまった。待機と言っても、今日は終わりといわれたようなもので騒ぎぐらいは警察の管轄だし、テロもクリスマス前にかなり一掃してしまったので騒ぎを起こすグループすらない。 「やっぱ行くのか?」 「………」 ザックスが助手席に乗り込み無言で駐車場を後にする。 「ねぇ」 「何でしょう」 レンは、用意されていた服にクラウドを着替えさせてしまい今髪をいじっている。 「…これも、ルーファウスに頼まれたの?」 「そうですよ。私としては、君のくせっけが見れないのは寂しいけれどまた雰囲気変わって楽しいですよ」 クラウドの髪に櫛を通しながら、見る見るきちんと纏められていく。いつも悪戦苦闘して諦めているのに、クラウドはレンの手には魔法がかかっているんじゃないかと思った。 「ほら、出来上がった。後、少し顔もいじっていいかい?」 「?」 眉をそろえられて、眦にアイラインを入れられる。 クラウドは、もう何が何だか判らんと言った感じで黙ってレンのされるがままになっている。その時、部屋の扉がノックされレノが入ってきた。クラウドの足元にはダークネイションが寝そべっている。 「用意は、出来た…出来たんだぞ、と」 レノは、クラウドの姿を見て笑う。 レンが、いってらっしゃいと最後にチェックを入れて部屋から送り出す。 「ねぇ、レノさん」 「何だぞ、と。子チョコボ」 クラウドは、立ち止まりレノを見上げる。 「何で、この格好しなきゃならないの?」 「ん、楽しけりゃそれでいいぞと思うぞ、と。それに、坊ちゃんも喜ぶぞ、と」 レノに連れられて、パーティ会場となる広間に連れてこられたクラウド。レノからは、ホームパーティな様なもんだから知り合いしかこないと聞かされていた。テーブルには、用意万端とばかりにテーブルが並べられ壁側に椅子が置いてある。その大きな扉の横には、料理が並べられたり料理人が立っている。クラウドは、目を回しそうだった。クラウドが入ってきた途端ね視線が二人に集まったが、一礼するとまた仕事に取り掛かる。一番目を引いたのは、大きなツリーだった。 「もうすぐ坊ちゃんも来るんだぞ、と」 レノは、クラウドと共に大きなツリーの前に行く。 「俺、クリスマスやるの初めてなんだ。知らない事ばかりで…」 「子チョコボ、ツリーがそんなに気に入ったかだぞ、と」 こくんと素直に頷く。 「よく来てくれたね、クラウド」 「ルーファウス」 仕事でのパーティ服から打って変わって、相変わらず白尽くめだったが刺繍の施された生地が光に当って輝いている。クラウドの横にいたダークネイションがルーファウスの元に歩み寄り鼻をこすりつけている。 「よく似合うよ、クラウド」 くすくす笑うルーファウス。 「もうすぐで他の招待客も来る頃だから、ゆっくり先にお話でもしながらお茶でもしよう」 ルーファウスは、給仕に珈琲を頼むと椅子に座った。その横にちょこんと座るクラウド。 レノは、ツォンを見つけて走り寄って何か話している。 「しかし、遠目から見てもあれじゃ兄弟だぞ、と」 「ルーファウス様も、人が悪い。何も見目形を似させなくても」 クラウドは、相変わらずルーファウスの正体に気づいていないしルーファウスはその状態を楽しんでしまっている節がある。ルーファウスの元に来客の知らせが届きツォンが迎えに出る。その後ろにはレノが、面白い事が起こるぞ、とついていく。 「クラウドは、何処だ」 開口一番のセフィロスの台詞はこれだった。 「まぁ、ともかく中へ」 「おじゃましまーす」 ザックスは、この場を楽しんでいるのか正宗が怖くないのかツォンの後についていく。 「まぁいいじゃないか。クラウドだって、クリスマス初めてだって喜んでいたし飯はルーファウスが出すんだから」 不機嫌絶頂で、ツォンの後ろにつくセフィロス。 「クラウド」 部屋に通されたセフィロスが見たのは二人で仲良くおしゃべりをしている姿であり、クラウドの姿を見て驚いていた。あのつんっと立ち上がった癖のある髪が、綺麗にウィッグが施されてストレートヘアになり後ろに蒼いリボンで結わいてある。服装は、隣にいるルーファウスと似ているが、白い燕尾服にベストはオリエンタル・ブルーのベストにスタンドネックにリボンタイをしている。そのリボンタイを止めているのはおそらく加工されたマテリアだろう。色からして、支援マテリアだ。 「セフィロス!ザックス!」 クラウドは、扉が開き猪突猛進で来るセフィロスに驚いていた。クラウドは、ルーファウスとセフィロスが知り合いだったのに驚いているらしくきょとんとセフィロスを見つめている。 「ねぇ、ルーファウス。招待客ってセフィロスとザックスだったの?」 「ああ、そうだよ。きちんと招待状も出したしね」 セフィロスが、クラウドの前に立つ。 「どうしたの?そんなに、慌てて…」 クラウドが、友人とどう過ごそうが構わなかったがルーファウスやタークスに関わらせる事を嫌っていた。ただ、当の本人がレノになついているしルーファウスの事は何故かメル友として受け入れているようだし。それが、セフィロスに取って頭痛の種だった。 「何もされていないか?」 首をかしげて、セフィロスを見上げる。 「何言っているんだい、セフィロス」 「ルーファウス」 眉間に皺寄せて、ルーファウスを睨むがルーファウスの方は何処行く風で淡々と笑っているだけだ。 「彼と私は、友達だよ。友達をクリスマスパーティに呼んで何処がいけないんだい?」 「どうしたの?セフィロス」 何で、機嫌悪いんだ?セフィロス。余程神羅のパーティ出るの嫌だったのかなぁ。 クラウドは、首をかしげてセフィロスを見上げながらボケをかましていた。 「早々、クラウド君が作ってきてくれたケーキもあるんだ。セフィロスは、食べたくないの?」 ルーファウスが、意地の悪い笑みを浮かべながらセフィロスを見る。 「あっ俺、食べたい」 ザックスが、はいはーいと腕を上げて割り込んできてセフィロスの首には手が届かないので襟首引っ張って 「どうせ、クラウドは気づいちゃいないし、クリスマスだし、クラウドが、楽しけりゃそれでいいじゃないか」 ツォンが、カートに乗せてくるのは真っ白な生クリームを包んだショートケーキのホール。それを給仕の女性が綺麗に切り分けていく。 「美味しそうだね」 「初めて作ったから、余り自信ないけど…それに…ルーファウスにプレゼント用意出来なかったから…」 ルーファウスが、目を見張る。ツォンは、その背後で嬉しそうにめったに変えない表情をほころばしている。 「これを僕にかい?」 こくんと頬を紅くしながら頷くクラウド。 セフィロスは、給仕から珈琲を受け取り一口飲んだ。 「旦那、落ち着けって」 ザックスが、皿いっぱいに盛られた料理を片手にセフィロスの背中を思い切り叩いている。 「痛い」 実際痛くなんか無かったのだが… その背後でレノが背中を丸めて笑っている。すっと入ってきたルードには、何でこのレノが受けているのかがよく飲み込めてなくって部屋を一通り眺めて見る。用意された料理や夫々が楽しいお喋りをしたりセフィロスにクラウドがお皿を持って料理を運んでいる姿がどうしても親鳥に、雛チョコボが餌を運んでいるようにしか見えなくてレノとザックスが笑っていた。 「ケーキ、美味しかったぞ」 「甘くなかった?大丈夫たった?」 「程よい甘さで、美味しかったぞ」 そっかーvvと、喜ぶクラウドを見ながら微笑むセフィロス見て固まったのはツォン達だった。確かに、クラウドが来てからセフィロスの纏う空気が変わってきたのはわかるが、あからさまに表情を出した事は今まで他人の前ではなかった。そのセフィロスが、微笑んだ。多分、クラウドの笑顔以上に貴重なんじゃないかと回りはつい考えてしまった。 「ちっ、カメラ持ってくるんだったぜ」 その一言を言ったのは、ザックス。 おい、その写真どうするつもりなのか、聞いてみたいぞ、と… レノは、内心一人ごちていた。 そこへ一人のお手伝いさんが駆け込んできてツォンの下に走り寄って行く。セフィロスは目端でその様子を捉えていたが、気にする事でもないとばかりにクラウドが持ってきてくれた料理を食べながらレノと話しているクラウドを見ていた。レノのほうは、どうも子チョコボに懐かれてしまったぞ、と内心思いながら横にいるルードは何時ものあのくせっけを触れなくてうずうずしていた。 「レノ」 「ちと、用事だぞ、と」 クラウドから離れてルードを連れて出て行くのを見送ってルーファウスのところに行く。 「なんだろうねぇ。まぁ、気にすることないよ」 未成年の二人…特にクラウドのグラスにはオレンジジュースが注がれており、ルーファウスはのみ慣れていてもクラウドの手前同じオレンジジュースを飲んでいる。 「クラウド、冬季休暇中は、どうするんだい?」 「レポートもあるし、訓練だってあるし…バイトもあるし」 ルーファウスは、そう言えばツォンが言っていたな。クラウドは、奨学生でそれ以外のお金は全て故郷の母親の元に送金していると。セフィロスの元でのバイトはクラウドにとって生活問題なのだ。ルーファウスの母親はルーファウスが幼い頃に亡くなっているし父親はいてもいないような存在で、クラウドは、父親の存在すら生きているのか、亡くなっているのか知らないと聞いた。故郷では、クラウドは浮いた存在だったと。全く自分と正反対だから、気になったのか。今では年の少し離れた弟のような親友だ。 「冬季休暇、私も時間作るからよかったら私と一緒にコスタ・デ・ソルにある別荘に行かないかい?」 「コスタ・デ・ソルって…あの観光地の?」 ルーファウスが、前髪をかき上げながら言う。 「ルーファウス、勝手にクラウドを勧誘するな」 クラウドの背後に現れたのは、セフィロスだった。何時もなら、気配すら読めるクラウドもこればかりは驚いて飛び跳ねた。その時だった、少し慌てたツォンの後ろからどやどやと足音を立てて入り込んできたのは―― 「あいつら…」 「総隊長ーvv」 どやどやと入ってきたのは、ソルジャー1stの塊。 リークを先頭に、隠れるようにしてアレックスが大きな身体を丸めて背後にいるのが目に付く。回りは、この大勢の突入に唖然として手を止めてしまっている。 「クラウド、貸切にしないで、俺達にも遊ばせてくださいよー」 「アレックス!!」 セフィロスが、一喝するとアレックスはしぶしぶ後ろから出てきた。 「部隊長のお前がいながら…」 「いっ…いや…」 アレックスがセフィロスに捕まっている合間に各ソルジャーは散ってしまっている。料理を貰っている者やさすがにクラウドの横にルーファウスがいるせいかいい防波堤になっている。ザックスが、リークの頭をバンと叩いている。 「お前らなァ…」 「だって、二人だけって言うのはずるいぞ。子チョコボと何時も…」 リークの身体がいきなりザックスにもたれかかる。 「うわぁ」 「誰が子チョコボだ!!」 その背後には、クラウドが仁王立ちになって、立っている。 「うわ、今日はチョコボヘアーが・・・・うぐ」 倒れたまま、リークは口を滑らせて腹を踏みつけられている。ザックスの方は、リークの下敷きになっているせいでリークの糞重い体重とクラウドが踏みつける圧力でもがいていた。 「馬鹿やろう、クラウドがマテリア装備している事忘れやがって…」 どうやら、ソルジャー達は酔っ払っているのかリークを踏みつけているクラウドを後ろから羽交い絞めにしたのは、シャールだ。クラウドは、額に怒りマークを浮かび上がっている。セフィロスは、とっさにウォールをかけてしまっている。ルーファウスは、察知してセフィロスの背後に走り回ってしまいお手伝いさん達はいち早くこの騒ぎに非難している。 「何故、俺の背後に来る」 「一番安全だしね」 その瞬間だった。 稲光が、室内を埋め尽くし大音響と共に閃光が走り去り、ソルジャー達が彼方此方に転がっていた。 「サンタガだな」 「ふぅ、ピンポイントが出来るのはセフィロスだけだと思っていたよ」 ソルジャー達が、クラウドのサンタガを受けて転がっている中一人立っているのはクラウドだけ。クラウドか、一息ついて、セフィロスとルーファウスの下に来る。 「ごめんなさい」 「いや、俺としてはいい仕置きだと思うが?」 アレックスは、難を逃れて壁にへばりついておりザックスの方は、リークの下敷きのままだ。 「……やたらめったにクラウドをからかうのは、命がけだな」 「アレックス」 アレックスの説明だと、あの後残ったソルジャー達でスラムに飲みに行き、話の内容がクラウドに行き酔っ払った勢いで雪崩れ込んだらしい。 「俺は、止めたんですよー。仮にも副社長の自宅なんだし…」 「副社長?」 アレックスが、慌てて口を両手で押さえ込む。 「副社長って?誰の事言っているの?」 セフィロスが、アレックスを睨みつける。ザックスが、アレックスを背後から羽交い絞めにして連れ去ってしまう。クラウドは、眉間に皺寄せたまま、セフィロスとルーファウスを見ている。 「今、アレックス自宅って言ったよね。どう言う事?」 「黙っていて、すまない。確かに私は神羅の副社長だ。だが…」 ルーファウスは、慌ててクラウドに説明しようとしたが… 「…ルーファウスは、ルーファウスだよ?」 ルーファウスは、瞳を大きく見開いてクラウドを見た。 「黙っていた事、怒らないのかい?」 「……俺が聞かなかったし、勝手に勘違いしたのは俺なんだし」 ツォンは、胸をほっとなでおろした。ルーファウスの方も、ほっとした表情になっていた。あの英雄が気に入った理由が判るような気がしますね。 「クラウド、二人に渡すものがあるんだろ?」 気を取り直した、ルーファウスがクラウドににっこりと微笑みかける。クラウドは、慌てて部屋隅から二つの紙袋を持ってきた。 「これ…」 ひとつの大きな紙袋から、綺麗にラッピングされたプレゼントをセフィロスに差し出す。 「俺にか?」 こくんと、頷きもうひとつの袋からプレゼントを取り出してザックスに渡す。 「俺にもか?」 クラウドから、プレゼントを受け取りラッピングをはがしていく。 ザックスの箱から出てきたのは、オフホワイトのフード付きスウェットパーカーにその背中の同じプリントと同じ狼の形を取ったシルバーアクセサリーのネックレス。 「クラウド、これを俺にか?」 「うん」 ザックスは、ネックレスの方を早速首元に飾ってくれている。 「旦那のは?」 セフィロスが箱を開けてみると箱の中には、一着の暖かそうな白いVネックのセーターに黒いシャツ。 「クラウド、ありがとう」 クラウドは、真っ赤になりながら俯いてしまった。 「ルーファウスにも、買いに行くのを手伝った貰ったんだ。俺…あんまり、店知らないし…」 ザックスが、クラウドの髪をくしゃくしゃにしようと手を伸ばしたがウイッグもしているので肩をぱしぱし叩いた。 「ありがとうな、クラウド」 「痛いよ、ザックス」 ザックスがジャケットのポケットからひとつのラッピングされた包みをクラウドの掌に乗せる。 「クリスマスプレゼントだ。開けてみ」 クラウドは、綺麗にラッピングされているリボンを解き紙を丁寧に取り出てきたのはひとつの箱。その蓋を開けてみると、サファイアブルーの二つ折りの財布が出てきた。 「これ」 「これ見たとき、クラウドにって思っちまったんだよ」 「ありがとう。大事に使うね」 財布を箱にしまい嬉しそうに手の上で持つ。 「クラウド」 セフィロスは、クラウドの目の前にひとつの小さなプレゼントを差し出した。空いている片方の手を取り乗せてやる。少し重みがあった。ザックスから貰ったお財布をいったんテーブルに置きラッピングを丁寧にといていく。 「…なんだろう…」 まるで宝石の箱のようなベロアの箱の蓋をそっと開けてみると。 「ナイフ?」 「ああ、そうだ。ナイフといっても、護身用だな。殺傷能力は無いが、魔力の高いお前なら持てば判るな」 クラウドは、そっと柄を握ってみる。 何か不思議な暖かな力が伝わってくる。 「お前の魔力を高めるためのナイフだ。マテリア装備も出来る」 「セフィロス…ザックス…本当に、ありがとう。俺…」 二人を見上げたクラウドの大きな瞳からぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちる。セフィロスの方は、泣かれたクラウドをどう扱っていいのか判らずおろおろしているし、ザックスの方はけらけら笑いながらクラウドの涙を拭いてやっている。ようやく、クラウドのサンタガから復帰したソルジャー達がこの光景を見て「二人が泣かしたー」と煽っている。 |