Cineraria-サイネリア- |
帰り際、玄関まで送りに出たルーファウスがクラウドに 「あの衣装は僕からのクリスマスプレゼントだから」と、衣装ケースに入った先程のスーツを渡された。セフィロスが運転する車の中で、疲れたのかうとうととし始めているクラウド。時計を見ればもうイブはとっくに過ぎている。ザックスは、他のソルジャー連中とまた飲みに行くといって先に去っていってしまった。自宅の駐車場に入れ、クラウドを抱きかかえ荷物を持ちエレベーターに乗り込む。セフィロスはクラウドにもうひとつ見てもらいたいプレゼントがあった。灯りをつけ、ソファーに一度クラウドを寝かして自分の荷物とクラウドから貰ったプレゼントを置きに行く。サンルームの灯りをつけてから、もう一度部屋の灯りを消してしまった。 「クラウド」 「ん」 セフィロスは、クラウドの身体を抱き起こし抱えサンルームに連れて行く。クラウドは、まだまどろみの中らしくセフィロスの方に顔を押し付けてぐずぐずしている。 「クラウド、少しでいいから起きてくれないか?」 「なーに…」 瞼を開けてみると、セフィロスの秀麗な横顔が近く似合った。 クラウドは、自分が誰の腕に抱えあげられていて、何処にいるのかすらよく判っていない。ただ、ぼんやりとした思考でセフィロスと帰る途中だったようなとか思い出せない。セフィロスはそのまま置いてあるベンチに座る。 「………」 「ここ、サンルーム?」 「ああ、そうだ。夜中だが…」 サンルームには、照明は無かったはずなのに… 「明るい…」 「お前が、行った後少しここをいじってもらってな」 「何で?」 「もうひとつのクリスマスプレゼントだ」 セフィロスが指を指した方向には、小さな花びらが輪になって咲いている青い花が咲いていた。クラウドは、ここにこんな花あったっけ?と首を傾げてみる。 「お前のクリスマスプレゼントを考えている時にな、花屋にこれが目に付いたのだ。そこに置いてあったのは鉢植えひとつでな、ひとつでは寂しい感じがしたから店員に出来るだけ多く集めて欲しいと頼んだ」 「セフィロス…この花は?なんていう名前なの?」 「Cinerariaサイネリア…花言葉は教えて貰ったのだが「元気」だそうだ。お前みたいだな」 クラウドが、くすくす笑いながらセフィロスの首元にしがみ付いてくる。 「元気は、ザックスじゃないの?でも…ありがとう」 クラウドをそっとベンチに座らせ、セフィロスはいったんそこを離れた。クラウドは、照明に照らされたサイネリアを見つめている。セフィロスが戻ってきた時には片手に温めたミルクが入ったマグが二つに毛布を持ってきていていったんマグを置きクラウドを毛布でくるみマグを渡してやる。 「ありがとう」 セフィロスは、クラウドの横に座り花を見つめる。クラウドは、飽きる事無くセフィロスにもういい加減寝ろと言われるまでそこで見つめていた。時計を見ればもうPM2:47を指している。幾ら明日も休みとはいえそうはいかない。 「セフィロスは明日もお仕事?」 「ああ、だが年始年末休みがあるからな」 クラウドを寝かしつけると、クラウドがテーブルの上にのったセフィロスから貰ったナイフの入った箱とザックスから貰った財布をとってもらった。 「明日だって、幾らでも見れるぞ?」 「だって…」 クラウドが膨れて見せる。 セフィロスは、笑いながら部屋の灯りを消し部屋を出て行ってしまった。横になって貰ったプレゼントを出してみる。お財布は、ありがたかった。今使っているのは、子供の頃からで母さんがくれたものだった。必死に働いて買ってくれた財布だから大事に使ってきた。新しいのを貰っても捨てる気は無い。明日中入れ替えて大事にしまっておこうと財布を箱に戻す。セフィロスがくれたナイフはシルバー製で本当に護身用と言うか、装飾品に近かった。柄にはドラゴンが模ってありその双方の瞼には紅い石が填め込まれてある。そっとその石に触れてみると… 「これ…マテリアだ。でも、召喚マテリアだけど…」 魔力は感じられるが、多分何かの衝撃で割れてしまったマテリアなのかなとクラウドは思う。そっと箱の中にしまい蓋を閉じる。 「ああ、そうだセフィロス用にクリスマスケーキもうひとつ作ったんだけど…あれだけいっぱい食べちゃったし…明日執務室に持っていけばいいか」 瞼を閉じ横になる。
あれだけ遅く寝たにも拘らずセフィロスはクラウドが起きてくる前に執務室に行ってしまったようだった。テーブルにはメモが置かれてあった。朝食を黙々と食べ支度を済ませてしまうとサンルームに出てセフィロスが買ってくれた花を見つめている。その後、ルーファウスにメールを打ち送り終わるとダイアナが来て「今日は、どうするの?」と聞かれたからお昼食べて午後は執務室に行こうかと言うとじゃあ三人分のお弁当を用意してあげるからお昼前に行ったらと言われクラウドもそうする事にした。 「今日は、凄い寒いからきちんとコート着てマフラーもしたほうがいいわよ」 「ここにいると、外の温度忘れちゃいそうだよ」 セフィロスの家は空調完備だから判らなくなってしまう。 ダイアナが、お弁当を作り終えるまでクラウドはテキストを開いていた。出来たお弁当を冷めない様に包み込み袋に入れてクラウドに渡す。クラウドのマフラーを巻きなおしてやり送り出した。 「ほんと、寒いや」 吐き出す息が、白く散っていく。 「今日は、外のお仕事じゃないよね。セフィロス」 クリスマスまでの警備の報告書があるといっていたし。年始年末の警備システムの見直しもあるといっていた。クラウドは、お弁当が冷めるのを気にして酔うのは嫌だけどバスに乗り込んで本社ビルに向かったが、本社ビルについた頃には顔は真っ青だった。受付のお姉さんが、すぐ駆け寄ってきてくれて椅子に座らせてもらった。だけど…場所をもう少し考えてほしかった。受付カウンターの中なのである。だけど気持ち悪さのがいっぱいで、そんなのを気にしている余裕はなかった。 「あれ?クラウドじゃないか?」 イーヴァが隣にいるイヴンを突っつく。 「おう、子チョコ…」 イーヴァが慌ててイヴンの口を抑える。 「昨日のサンタガ忘れたのかよ」 「おう」 二人してカウンターに向かい声をかける。 「クラウド、受付嬢に転向したのか?」 「…違う…」 「バスで、酔っちゃったみたいなので…」 横にいた受付嬢が慌てて弁明している。 「そうか、子チョ…いや、乗り物弱かったものな」 イヴンがカウンターをぐるりと回ってクラウドを持ち上げる。 「やめろよ…うっ…」 気持ち悪さのが先で反抗してみる力がない。 「あっこれ、荷物です」 「ありがとう、助かったよ」 クラウドの荷物を受け取って、エレベーターへ乗る。 「気持ち悪い…」 「そう言えば、これもだめだった」 二人は、慌てて階数ボタンを何度押してもすぐ行く分けないのにばしばし叩いている。 「総隊長―(慌)」 ザックスは、何だとばかりにモニターを見る。モニターに映し出されているのは、巨漢の男二人イーヴァとイヴンコンビ。ただ、その小脇に抱えられているのを見て慌ててザックスは扉を解除して開けた。 「どうした」 「いや…」 「それより、クラウドを降ろせ」 機嫌の悪い声が、執務室の奥から降り注いでくる。 イヴンが慌てて、ソファーにクラウドを降ろす。 セフィロスが、デスクを離れてぐったりしているクラウドの所に来るが… 「………」 「何だ?クラウド」 クラウドは、何か言いたいのだろうが何を言っているのか判らなかった。クラウドは、のろのろと腕をあげてイーヴァが持っている荷物を指差す。 「これか?」 「…お弁当…ケーキ・…だから…」 三人が、イーヴァを見る。イーヴァ…確か、振り回してなかったか? イーヴァは、恐る恐るその袋を下ろす。 ザックスは、袋を開けて中を見て包みを取り出してみる。どうやら、バンダナに包まっているのがお弁当らしいが…その下にケーキボックスがある。 「……あんまり考えたくないが…」 お弁当の包みを出し、ケーキボックスを取り出してみる。 二人の喉がなる。セフィロスの方は、クラウドにエスナをかけ途中だ。 「うぎゃ…」 「あーあ」 ケーキボックスの中身は、悲惨たるものだった。ケーキは、レモンレアチーズケーキだったが元の形が半分残っているぐらいでぐしゃぐしゃになっていた。 「午後のお茶請けにしようと思って…昨日食べれなかったから…」 「もしかして、これクラウドの手作り?」 こくんと頷く。 二人は、真っ青になっていた。ザックスの背後から、暗黒のオーラを背負って立っている総隊長を見てしまったからである。 「また、作るから…」 「クラウド、優しいーーvv」 二人が抱きつきたい思いだったがここで抱きついたら、まず正宗の錆と果てるのを悟り早々に執務室を出て行ってしまった。だいぶ顔色もよくなってきたクラウドは、ソファーにぐったりと座り込んだままだったが喋る事はできそうだった。 「もうすぐで、お昼だからと思って…ダイアナがお弁当用意してくれたんだケーキは、昨日セフィロスに食べて貰おうと作ってみたんだけど…」 セフィロスが、クラウドの髪を手で梳いてやっている。 「だけどよ、落ちたわけじゃないし崩れただけだろ。俺は、別に構わないぜ」 ザックスは、そっと箱をしまい冷蔵庫に入れてくる。 「少し早いが、お昼にするか」 「おう♪」 お弁当を空けてみると中身は確り偏っていたがケーキほどの被害は受けていなかった。ようやく落ち着いたクラウドをいれて三人でお弁当を食べ珈琲を入れにクラウドはキッチンに行ってしまう。 セフィロスもザックスも昨日クラウドがあげたクリスマスプレゼントの服を着ていてくれた。それが、とても嬉しかった。クラウドの方も財布を入れ替えて、セフィロスがくれたナイフも装備している。珈琲を三人分用意して執務室に行く。 「後で、ケーキ食おうぜ」 「俺も手伝おうか?」 「いや、今日はいいぞ。それと手の空いているソルジャーあいている奴でいいから訓練付き合ってもらえ」 こくんと、頷くクラウド。勿論、その後クラウドの相手をしたのはふらふらしていたイヴンとイーヴァだった。剣と魔法を織り交ぜてかかってくるクラウドから、お手上げとばかりに逃げ出しリークにしがみ付いて変わってくれと懇願したとか。ザックスが訓練所に行った時にはアレックスが、相手をしていた。クラウドを切り上げさせシャワーを浴びさせるとケーキ食べるぞっと連れて行ってしまった。勿論その場にいたソルジャー達も二人の後を追いかけた。皆で形の崩れたケーキを食べて一日が終わった。セフィロスは、クラウドがまた酔ってしまうのを危惧して一緒に帰ればいいと執務室に残し、クラウドは二人に珈琲を入れてやったり本を読んだりしていたが、ソファーで本を枕にして眠ってしまっていた。セフィロスは、クラウドを抱え上げて仮眠室に連れて行きベッドに入れてしまう。 「………」
起きたら、驚くだろうな…
「クラウド」 「ン…」 ベッドで丸まって眠っているクラウドをザックスが肩を掴んで揺さぶっている。 「クラウド、起きろって。もう、帰るぞ」 「………帰る?何処に?」 「寝ぼけてんじゃないって、クラウド。外見てみろよ」 ザックスが、ブラインドを開ける。 瞼をこすって、ようやくムつくりと起き上がったクラウドの瞳に映ったものは―― 「くしょん…」 起きたてで、部屋の気温になれないためくしゃみが出たクラウド。 「凄いや…」 今まで寝ていたのが嘘の様に仮眠室から飛び出していく。 「やっと、起きたか」 「セフィロス…」 セフィロスがクラウドにコートを着せてやりマフラーを確りと巻いてやる。 「外は、寒いからな」 「……うん」 地下駐車場から車で外に出ると、別世界のような気分だった。暗い空から、ひらひらと舞を踊るように落ちてくるふわふわとした冷たい粒がフロントガラスに当ってはすぅと消えていく。ザックスは、バイクで帰るのが嫌だとかで後部座席で丸まっている。 「積もるかな」 「さぁな、たとえ積もっても交通は麻痺するし後はどろどろで大変だぞ?」 セフィロスの話だと、雪に電車も動けなくなり麻痺するそうだし雪道を歩くのに慣れていないから転倒して怪我する人達も多いそうだ。それに、すぐ溶けてしまうので、彼方此方がびしゃびしゃになるし朝は凍結してスリップ事故にもなると説明してくれた。 「うーん、それって現実過ぎて面白くないよ、旦那」 「ザックスは、楽しいのか?」 「こういう日は、暖かくてふわふわの女の子にしがみ付くのが一番だな」 クラウドは、「女の子は抱き枕なのか?」とザックスに聞くとザックスは、大うけしていたがまぁそんなもんだと言っていた。ザックスをマンションに送り届けて自宅に戻ってくる。夕食は、麻婆豆腐だった。 「ちょっと、辛かったけどおいしかった」 「そうだな」 クラウドが窓ガラスにへばりついて上を必至に見ている。 「幾ら空調が効いているとはいえ、へばりついていると寒いと思うが」 「うん――」 それでもクラウドは、見るのを諦めない。 セフィロスはその横に立って、へばりつきはしなかったが上を見つめてみる。 「なんかさ…白い花びらが舞い落ちてるみたいで綺麗だね」 「そうだな」 「明日までに積もるかな」 「積もって欲しいのか?」 「うん、綺麗だと思うんだ。それに…遊びたいし」 セフィロスが笑う。
「セフィロス…昨日すっかり言い忘れちゃってたんだけど…」 「何だ?」
「ちょっと遅くなっちゃったけど メリー・クリスマス」 「ああ。メリー・クリスマス」
メリークリスマス!(便乗中・笑)
elricさんとことのフリー小説を拉致ってまいりました!
いやぁ…賑やかでいい感じですよね〜!!クラウド君皆に愛されてる感じですごい微笑ましいお話!
私もこんなわいわいしたお話が書ける才能が欲しい(涙)
こんな素敵な小説をフリーにしてくださってありがとうございました!!
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