次の日
宿屋のキッチンを借りて揃えた材料を出し始めるクラウド。 ナナキは、手伝えないため子供達をひきつけておく役目だ。ヴィンセントは、珍しくマントを取りエプロンをしている。 「私が、作れると思うのか?」 「手伝うだけでいいよ。もしかして、包丁とか持った事無いとか」 旅している時は、交代制で夕食や朝食を作っていたのだからそれは無いと思うが、あくまであれは簡単に大勢が食べれるものばかりだ。クラウドは、ちゃっちゃと用意をし始めている。
「ねぇ、ナナキ」 横には、クラウドが召喚したデブチョコボが子供達を乗せてのったりのったりと歩き回っている。ザックスとセフィロスは、遊ぶというより木刀を交えて剣の稽古中。 「何で、クラウド達の所行っちゃいけないのさー」 ロバートが、剥れている。 「クラウドとヴィンセントはお仕事中なんだから、邪魔しちゃだめだろ?」 ロバート達が剥れた顔をする。あれから、子供達はクリスマスの事をじっちゃん達に食い下がったらしく今日が、イブだって知っている。 「いい子にしていないと、サンタさんこないよ?」 「「やだぁーーー」」 その頃キッチンでは、ヴィンセントとクラウドが奮闘していた。 ヴィンセントは、手際よく料理を作っていくクラウドを見ながら小さなため息をつく。 「これ、並べて」 「ああ」 広場には、昼間クラウドが何処からか切り倒してきた大きな木が立てられている。その木に飾り付けしているのは、じっちゃんたちだ。その中にちらほら見える召喚獣が何体か。 「おい、クラウド」 「何?」 ヴィンセントは、小さな窓からツリーの飾り付けを見て真っ青になっていた。 「お前、あいつらも召喚していたのか?」 「だって、人数が多いほど楽じゃないか」 クラウドは今スポンジに生クリームを塗りたくっている。 「しかし、お前料理大半は何処で覚えた?」 「ん?神羅時代」 ヴィンセントは、まじまじとクラウドを見つめた。 一般兵だった筈のクラウドが、そこまで余裕あるのか? 「ああ、俺一般兵だったけどセフィロスとザックス付きの下士官だったから。ソルジャー試験には筆記は受かったんだけど、まあ判るだろ?魔晄に耐えられない身体でさ…」 ヴィンセントは、頷く。 「セフィロスの訓練生だった時に、いつも食事作っていたんだよ。セフィロスに教えてもらいながら。まぁ下士官になっても、一緒に住んでいたからな…」 外では、器用にナイツオブラウンドの騎士達が飾り付けをしている。 ヴィンセントは、一体クラウドの魔力はどうなっているんだ?と首をかしげる。 あの当時のセフィロスにだって、こんな魔力はなかったはずだ。 「さーて、ケーキも出来たし準備も済んだし」 クラウドは、出来上がったケーキを冷蔵庫にしまっている。
「ずいぶん、綺麗に飾りつけできたなぁ」 クラウドは、上を見上げてにっこり笑う。 メイがケンから離れて、クラウドにしがみ付く。 「しかし、ツリー大きすぎやしないか?」 一番上なんか、はっきり言って見えていない。上の方の飾りつけはどうやら召喚獣たちがやったらしい。クラウドが呼び出した時に、説明して飾り付けさせていたが、クリスマスなんて意味判っているのか?と疑問符をヴィンセントは頭に浮かべていた。 「大きすぎたかなぁ…」 「先端だけでもよかったのでは…」 「まぁ、終わったら薪にするんだ。構わないさ」 ヴィンセントは、脱力していた。 ツリーの飾りつけも終わりクラウドは、召喚獣を引き上げさせている。 足元にしがみ付いているメイをひょいと抱き上げもう片方でジョンを抱える。 「ほら、風呂はいるぞ」 年の小さな子供を抱えてクラウドはすたすたと、風呂場に向かう。 風呂場で、メイやジョンの服を脱がせてバスルームに放り込み自分も入る。クラウドが風呂にはいっている間子供達はヴィンセントは、デブチョコボを出してくれとせがまられていた。 「私には、無理だ」 剥れる子供達をごまかしながらナナキに悲鳴を上げている。
夕方から、宿屋の食堂でクリスマスパーティが始まった。 クラウドが殆ど作った料理が出てきた時には、子供達の歓声があがった。 「うわー、凄いや」 クラウドは、膝の上にメイを乗せ、ヴィンセントの膝の上にはジョンが座っている。 宿屋の女将さんが、子供達の皿に料理を取り分けてくれている。 じっちゃん達は、クラウドが街で仕入れてきたワインを飲みながら料理の方も相伴に預かっている。テーブルの上に並べられたのは、チキンのマーマレードの照り焼きやきのこのクリームスープポットパイに、エリーケのシーザーズサラダにとろけるチーズの入ったライスコロッケにミルフィーユ風オムレツ。 「この献立は、クラウドが考えたのかい?」 女将さんが、クラウドの皿を受け取りながら盛り付けていってくれる。 メイに料理を少しずつスプーンに載せて、口元に運んでやると小さな口を開けてスプーンを咥えクラウドはスプーンを引き抜くともぐもぐと美味しそうに食べている。ヴィンセントのほうは、ジョンに食べさせているのに苦労しているようだ。 クラウドが作った料理は瞬くもなく子供達やじっちゃんたちの胃袋の中に消え、最後に出されたクリスマスケーキに子供達も大人達も目を見張った。ココアのエンジェル・ケーキにレアチーズケーキがテーブルに並んだ。今まで見た事もないデザートに、子供達は喜び切り分けられたケーキを頬張って食べた。小さなパーティも終わり、皿洗いや片付けは女将さんが買って出てくれた。クラウドは女将さんの横で皿を洗っている。 「大変だったねぇ」 「そうでもないよ。俺子供の頃クリスマスってした事無くて…初めてこんな行事があった事に驚いて、皆にクリスマスをしてもらった時…嬉かったから」 「そうかい」 洗い物も終わって、クラウドは自分の部屋へと帰ってくる。ザックスは、何故か腹筋をしていてセフィロスのほうは本を読んでいる。 「おかえり」 「ただいま」 クラウドは、ベッドに腰掛けて読みかけの本を取り出す。 「ザックス、明日筋肉痛になっても知らないぞ?」 「大丈夫だよ。筋肉馬鹿だから」 ザックスが、剥れて怒る。 「それなんだよぉ」 「こないだ、ヴィンセントが腕立て伏せもいいといったら一日中やっていただろう」 クラウドは、小さなため息をつき「今度は誰に腹筋しろと言われた?」と小さなため息を吐きながら尋ねてみる。 「ヴィンセント」 やはりか。 「ほどほどにしないと、明日本当に身体痛くなっても知らないぞ?」 ザックスの気の抜けた返事が返ってくる。 二人も、疲れたのかセフィロスは本を持ちながら小船をこいでいるしザックスに至っては既に腹筋したままの格好で眠っている。クラウドは、そっとセフィロスの手から本を抜き取りベッドの中に入れてやりザックスを抱え上げてベッドに入れる。二人が来たためにクラウドの部屋は少し広く改築された。おかげでこの二人のベッドは確保されている。 「ん〜」 セフィロスは、瞼をこすりながら布団の中に潜り込んでいっている。クラウドは、このぶんじゃ起きないだろうと思い灯りを消して出て行く。自分の部屋を出て行き天文台へと向かう。天文台には、ナナキとヴィンセントが既にいた。 「二人は?」 「もう、寝たよ」 「あれだけ、昼間遊ばせたからな」 子供達へのプレゼントは、展望台へと隠してある。それに、あれだけ遊ばせたから寝るのも早いだろうと三人は踏んでいる。 「明日起きたら、驚くだろうね」 「クラウドに、サンタクロースの格好をさせるのではなかったのか?」 「誰が、着るか!あんなもの」 ヴィンセントが、眉尻を上げて聞きなおす。 「ほぉ、クラウドは着た事があるのか?」 顔を真っ赤にしながら言葉を詰まらせるクラウド。ぷいと、横を向いてしまう。時計を見ればPM11:47だった。隠してあったプレゼントをごそごそと取り出す。 「さて、配りに行きますか」」 袋をそれぞれもつ。プレゼントには、誰宛かがきちんと判るようになっているから間違える事はないだろう。そっと子供達がいる部屋の扉を開ける。みな、やはり疲れたのかぐっすり眠っている。 「大丈夫だ。皆寝てる」 ナナキはもとよりヴィンセントも、元タークスだけあって足跡一つさせない。それぞれが、子供達の枕もとにプレゼントをおいていく。寝返りを打つ子供をよけながら、布団をかけなおしてやりプレゼントを配り終えると部屋からそっと出て行った。あとは、ザックスとセフィロスだけ。 そっと入り枕もとにそれぞれのプレゼントを置いていく。クラウドは、そのまま部屋に残り二人が部屋を出て行く。 「メリー・クリスマス。よい夢が見れますように」
朝の子供達の騒動は楽しかった。 朝寝ボケ眼で起きると、きちんと教えられたとおりに自分の枕もとにプレゼントがおいてあった。いつもなら、ぐずる子供達もこの日ばかりは飛び起きるようにして起き上がりそれぞれのプレゼントをもち眺めた後びりびりと丁寧に施されたラッピングを解いていく。 「うわぁ♪」 それぞれがバイクのプラモデルだったり、年齢に合わせたものが小さな手にはあった。女の子の大半はヌイグルミで、これはクラウドがよくザックスが女の子に送るプレゼントのアイテムの一つとして覚えていたし、小さな女の子も年齢関係なしに好きだろうと読んでである。男の子の場合は、もう選ぶのは簡単だった。自分が子供の頃ほしかったもの全てだ。子供達は、それぞれがプレゼントを文句一つなく喜んで見せ合っている。 「喜んでもらえたみたいで、よかったね」 「ああ、おかげで破産気味だよ。仕事、こなくちゃ赤字だ」 クラウドが、けらけらと笑う。 ザックスとセフィロスのクリスマスプレゼントと言えば
朝――
クラウドが、何やら煩いなと瞼を開ければ、何やらごそごそとした音が聞こえてくる。 「うわー」 騒いでいるのは、ザックスだけのようだ。 クラウドは、布団を被りなおし寝返りを打つ手もう一度眠ろうと体勢に入ったところ上に重いものが乗っかったと思ったら 「ザックス、降りろ!」 の台詞の後に子気味よい音が続いた。クラウドは、起き上がるとザックスが床に蹲って後頭部を抑えて唸っていた。 「ごめんよ、クラウド。起こしちゃって…」 「いや…」 セフィロスのプレゼントはレプリカだが村雨。クラウドが士官学校時代、よく使っていたものだ。ザックスには同じレプリカのロングソード。何処から探し出してきたのか、クラウドが持ち帰ってきたものだ。本来なら、クラウドはバスターソードを返したかったが、武器としては、重量がありすぎる。今のザックスには持てないという事と、まだこれを渡すには早いと思ったからだ。 「これ…」 セフィロスは、じっと見つめてくる。この送り主が、誰だか判っているのは明らかだ。 「よかったな」 「うん」
天文台では、クラウドが黙々と何かする後姿が見られた。 「クラウド、何しているの?」 ナナキが、問い掛けても振り向きもしないで何かに熱中しているらしい。
クラウドが何かに熱中しているなんて珍しいな。
テーブルを回り込んで前足をテーブルにかけて覗き込んでみれば…
「それって…」 「……ハイウインド…」 クラウド、結局これ欲しかったんだね。ハイウインドのパーツを接着剤でつけながら、なんか機嫌よさそうだよな。おいら達、これに乗って世界を飛び回ったんだよな。そう言えば。 「なんかさー、シドの声が聞こえそうだよね」 「ああ」 クラウドは、いったん作るのを止めて軽く伸びをする。 そこへ、ヌイグルミを抱えたジェシカが入ってきた。 「どうした?ジェシカ」 朝、クラウドに二つに分けて結んでもらったゴムはプレゼントの奴だ。ヌイグルミを抱えてとことことクラウドの座っている椅子の所に来ると膝に手を置いて 「サンタさんにお願いしたのに間違えちゃったの」 「何が?」 クラウドもナナキも疑問符を頭につけてしまう。 「ジェシカね、クラウドお兄ちゃんのお嫁さんになるってサンタさんにお願いしたんだよ」 クラウドが、いきなり咽ている。 「それなのに、違う子来ちゃった」 「ジェシカ、きっとサンタさん忙しかったんだと思うよ。来年また、お願いしてみたら?」 ジェシカは、栗色の大きな瞳を輝かせて頷く。 クラウドが頭を撫でてやると元気良く部屋を出て行くが
「来年は、ヴィンセントのお嫁さんって決めているの」
と、言い残し去っていってしまいクラウドとナナキはつい噴出してしまった。 「そのうちメイがクラウドのお嫁さんになると言い出しそうだね」 「お父さんから、卒業できそうだな」 そこへすれ違いにヴィンセントが入ってくる。 「将来の旦那様がきたか」 「何の事だ?」 クラウドと、ナナキが肩を揺らして笑っている。眉をひそめてキッチンに消えるヴィンセント。 「ヴィンセント、俺にも入れてくれ」 クラウドは、またプラモ作りに熱中し始める。
また次のクリスマスも 穏やかな一日でありますように
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神様がいるなんて思わない
だけど
この暖かいひと時がずっと続くといいと願う…
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elricさんとこのフリー小説を拉致ってきました。
くぅぅぅぅぅ!!!いいお話ですよね!
可愛い子供達に囲まれてサンタやってるクラウドってマジ可愛い!マジツボです!
そして、elricさんとこ名物のチビザクとチビセフィがまた可愛いし!
このおチビさん達にやられちゃった人は是非是非elricさんとこのHPに行ってみてください。
もっともっと堪能できます!
こんな素敵な小説をフリーにしてくださってありがとうございました!
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