(注意書き)
クラウドが弱気です。精神的に弱いです。
そういうの駄目な方はどうぞご注意下さい。
 
 
それでも読んで下さる方、スクロールお願いします。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
春とは名ばかりの、冷たく身を突き刺すような風が吹き抜け、衣服がバサバサと乾いた音をたてる。
元より癖の強い金髪がその風のなすがままに靡いて、時折視界を僅かに覆ったが大して気になりはしなかった。
どうせここは自らの身なりを気にするような場所ではないし、視界の半減を注意しなければならないほどに危険な場所ではない。
切り立った崖の上、辺りを一望できるその丘に一人立つ。
 
「…ここだ。」
 
ポツリと漏れた声はまるで自分の物ではないかのように掠れていた。
 
 
 
 
 
君への言葉
 
 
 
 
その場所にはもう、肉塊や血飛沫どころか、骨の一片さえ残されていない。
それでも、ここがアノ場所であると心は鮮明に記憶している。ここに立つだけで細胞の一つ一つがここであると声高に主張を続けるのが解る。
この世で無二の掛け替えのない親友を失った。この場所。
覚悟はしていた事だが、一瞬にして瞼の裏に、まるで昨日の事の様に鮮やかに甦ってくるあの光景は余りにも生々し過ぎた。
辺り一帯に巻き散らかされた、他の誰でもない自分の親友の、鮮血に塗れて穴だらけになった肢体。
生き延びるチャンスを奪った人間に対して恨み言一つ言わず、最後まで向けてくれた優しい笑顔。
覚悟していたよりも遥かに鋭い痛みが心に爪を立て、引き裂かれるような想いと、どうしようもない喪失感が渦巻いて、クラウドは唇をきつく噛んだ。
もうあれから5年も経つというのに、今も変わらず彼を失った痛みは決して消える事はない。
クラウドは本来の目的を思い出し、背中の大剣を引き抜くと、その地に深々と突き刺した。
地面を抉る強い手応えを感じながら、その刀身を三分の一ほどまで埋め、そのままゆっくりと手を離す。
鈍く光った刀身が陽光を受けて、まるで武勲のメダルか何かのように輝いた。
 
「…こんなんでごめんな。でも、あんたにはこれが一番似合うと思ったんだ。」
 
独り言に限りなく近くとも、決して自分にとってはそうではない。ザックスに対する言葉。ただし、返事は帰ってくることの無い。
クラウドは、口元を小さく笑みの形にした。
「言った事ないけど、ソルジャーのあんた、本気で格好良かったからさ…だからこの墓で我慢してくれよな」
そう、切り立った丘の上に突き刺したこの大剣は、ザックスの墓のつもりだった。
ザックスには墓がない。いや、正確には今この瞬間までなかった。
当然と言えば当然のこと。
数ある武勲を立てたソルジャーに対して、新羅がした事といえば、
脱走兵と言う汚名を着せ、ただデータベースからザックスの番号を抹消しただけなのだから。
ザックスの死はゴンガガの両親に知らされる事もなく、彼の親友である自分が彼の記憶を深くに沈めてしまった。ならば、墓が自然に立つはずもない。
5年の時を経て漸く、遺骨も何も無い不完全な墓しか立ててやれない事が酷く申し訳ない。
クラウドはそっと刀身に手を伸ばした。触れた先、何の温もりも宿さない刀身はただ冷たいばかりで。
ザックスの内包していた温かさとは比べるべくもない。
不意に瞳の奥が熱くなって、思わず俯いた。何の草花もない地面が瞳に入る。
「情けないな…」
思わず漏れた声の弱弱しさに自嘲する。
クラウドは記憶を取り戻して直ぐにはここに来なかった。いや、正確には来れなかったというべきか。
それは、ザックスにこんな不甲斐無い自分を見せたくはなかったからだ。
命を張って自分を助けてくれた親友に、こんな情けない姿をみせたくなかった。
しっかりと地に足を着いて生きている所を見せたかった。
それでも、今ここに居るのは、地に足どころか自分の存在さえ見失いかけている愚か者だ。
「ほんっと…情けない…」
クラウドはコツンと額を刀身に当てて、もう一度自嘲した。
 
「なぁ…もう、俺もそっちに行っていいかな…?」
 
涙という液体は流れる事はなく、嗚咽を漏らす事も出来ず、ただどうしようもない疲れが沈殿していく。
 
星を守る戦いが終わり、全てが終わった後、クラウドは愕然とした。
自分の中に、もう本当に何も無い。その事実に気付いたからだった。
 
クラウドはずっと走ってきた。
その理由に、世界を救うというご立派な大義名分が全くなかったわけではないが、
自分を本当に突き立てていたのは憎悪、復讐心、悔恨、という非常に人間らしい感情だったと思う。
セフィロスが居なくなって。もうそれらの感情の対象が無くなってしまって。
クラウドは唐突に途方に暮れた。
もう、自分がこの世に執着する理由、この世に自分を繋ぎ止めるだけの理由が何も無い事を突きつけられたも同じだった。
だが、やる事があるうちはまだ良かった。
メテオから星を救った後でも、様々な問題が発生し、その対処に追われる日々が続いた。
クラウドは寝る間も惜しんで働いた。身体を酷使する事が寧ろ救いだった。何も考えずに居られるのがただありがたかった。
だが、新羅に代わる新しい体制も整い出し、自分なしでももう大丈夫だと判断した瞬間。
あの瞬間から、もうクラウドは自分が存在する事が苦痛になってしまったのだ。
 
立ち直ろうと思った。強く生きて行こうと思った。
そうして、顔を真っ直ぐ上げれるようになったらザックスに会いに来ようと思った。
その目標も達せられないままにここに来てしまったのは、彼がたった一人の親友だから。
いつも、いつも。どれだけこの優しい友人に助けられてきたか。
言葉にすると酷く陳腐だが、もう言葉では言い表せない程の掛け替えのない物をたくさん貰った。
誰の助けも要らないと、一人突っ張っていた自分に根気よく構ってくれて。自分の面白くも無い話を真剣に聞いて、相槌を打って、笑ってくれて。
たった一人の世界から連れ出して、こんなに明るい世界もあるのだと、まだまだ見知らぬ楽しい事もあるのだと、指を指して笑いながら教えてくれて。
人間関係、自分への無力感、絶望感、その何もかもを諦めかけていた自分は、彼の一言一言にどうしようもなく救われていたのだ。
思えばセフィロスに会わせてくれたのも、彼だった。
普通ならば絶対に接点さえないはずの彼を紹介してくれて、名前を覚えさせてくれて、三人で過ごす時間を作ってくれて。
初めて人を愛すると言う事を覚えた。自分には一生縁のない物だと諦めていたソレを自分は彼のおかげで得たのだ。
ただ、セフィロスと二人で過ごす時間は確かに掛け替えのない時間で、何処か胸の奥が暖かくなる心地がしたけれど、
三人で過ごす時間もクラウドは大好きだった。場を和ましてくれるザックスのおかげで、自分は人との関わり方を覚えたのだと思う。
人なんか信用できないと思っていた。人を好きになるなんてただの弱さだと思っていた。
誰も信用できなかった自分が、人を愛するきっかけを得たのは間違いなく彼のおかげだった。
 
「…そっちに、行きたいよ…」
 
思わず漏れたその言葉は間違いなく本音だ。
三人で過ごした時間を思い出せば出すほど過去が恋しく、まだセフィロスが狂ってしまう前の優しく穏やかな時間が愛しくて仕方がない。
愛する人の居る世界。唯一無二の親友の居る世界。そちらへ。今すぐにでも行きたい。
積み重なった重い疲れが沈殿して、心にのしかかって、もうどうしようもなく疲れていた。
 
 
 
 
「おい!ここで何してる!」
 
 
 
不意に聞こえた声に酷く驚いた。思考の闇から急速に意識が引き上げられる。
こんな辺鄙な土地に自分以外の人間が来る事があるだなんて、そんな事考えつきもしなかったから。
振り返って瞳を見張った先に映ったのは、花束を抱えた、赤茶けた髪に痩身の男。見覚えのある、何処か親しみを感じさせる顔立ち。
 
「…あ…」
 
名前を呼ぼうとして、喉まで出かかった言葉がどうしても続かない。
確かに知っている人物なのに、まだ何処か覚醒していない意識がどうしてもその名を紡がせない。
彼の瞳をぼんやりと見詰めて、記憶を探っていると、徐にその男が大きく目を見開いた。
 
「お前…もしかしてクラウドか!?」
 
自分の名を呼ばれた事がまるで鍵か何かでもあったかのように、クラウドは自然とその名が浮かぶ。
「…リョウ…さん」
元ソルジャー1st リョウ=クリフォード。ザックスの友人の一人だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
何故ここに居るのだと問えば、ザックスの墓参りだとリョウは言った。驚くクラウドにリョウは自嘲の笑みを浮かべる。
リョウは、ザックス達が失踪した後も必死でその消息を追ったのだという。
ソルジャーという地位を持ってしても、彼が得た情報は消息不明の無機質な四字熟語のみ。
新羅の裏の顔はソルジャーとして幾らでも見てきたから、ザックスは恐らくもう生きてはいないのかもしれないという目算はついていたそうだ。
だが己も所詮新羅と言う大きな滑車を回す小さな歯車の一つに過ぎない事もまた十分に思い知っていたから、新羅を問い詰める事は出来なかった。
程なくして新羅を辞めたリョウだったが、それでも新羅の監視から逃れられる訳ではない。ソルジャーは様々な事を知りすぎている。
何かを話そうとすれば口封じに合うのが関の山。だがその雁字搦めの網の中でせめてもの抵抗にと、リョウは新羅のデータベースに何度も侵入を試みた。
何度も正体を突き止められそうになりながらも得た情報が最後にザックスを確認したと言われる地点だったそうだ。
そこでザックスはもう生きては居ないと確信したのだという。それから彼は緯度と経緯で示されたポイントに、1年に一度墓参りに来ていたそうだ。
はっきりした場所は解らなくとも、友の死を報いる事はしてやりたかったと彼は言った。
ザックスは何故死んだのか。同じく消息不明であったはずのクラウドは何故生き残れたのか。
そう問われる前にクラウドは自分から話し出していた。
セフィロスの奇行。ニブルヘイム炎上事件。腕に付けられたサンプルプレート。
地獄の底のようにほの暗い、湿気を含んだ地下研究所。非人道的な人体実験。
浮遊する意識。助かる見込みもない逃亡劇。そして、あの雨の日の悲劇。
喋る事で、気が楽になると考えた訳ではないが、一度関を切った感情は歯止めも効かず、ただ流れ落ちるままに全てを語り終えていた。
感情の高ぶりのためか、震えて仕方がない指先。喋り続けたためか、僅かに切れた息。
彼は途中何の質問も差し挟みはしなかったし、感情論を口にする事もなく、瞳も終始とても静かだった。
ただ、全てを聞き終わった後、
「…そっか…」
と小さく言っただけだ。それだけで、口を噤んだ。
クラウドも全てを語り終えると、もう言葉を発する気力も無く、唇を噛んで俯いた。
冷気を含んだ風が、荒廃した大地を撫でる様を肌寒さを感じながら見ていると、隣に腰を降ろしているリョウが小さく笑ったような気配を感じる。
驚いて、勢い良く顔を上げると、リョウは、静かに微笑んでいる。そして。
「そっか、良かった…。」
そんな、信じられない言葉を紡いだ。
決して慰める事を意図した訳ではないように感じられた。心の底からよかったと思っているような穏やかな瞳。
その、まるで聖人の様に澄んだ瞳を呆然と見上げる。
「何、が…」
「守りたいものを最後まで守れて。満足のいく死に方が出来て。あいつの生きたいように生きれて、かな。」
「何…、言って……」
思いもかけない台詞の数々にまともな反応も返せないうちに、リョウは瞳を静かに伏せた。
思わず眉を顰めてしまったクラウドの腕に、お供え用にだろう持ってきた花束をそっと置かれた。「これはお前に供えて欲しい」と微笑まれる。
「人を愛せないかもしれないと言ってたあいつが、本気で惚れてたお前に。」
「…………え…?」
ポカンと見上げるクラウドに、リョウは苦笑した。
「やっぱ、最後まで気付かせなかったんだな、あいつは。」
それからリョウは、あいつから直接聞いた訳じゃねぇけど、と付け足して。それでもあいつがお前を見る瞳を見てたら、嫌でも解ったと、笑う。
あんなに甘くて優しい瞳、好きでなくては出来るはずがないと。
「…な…」
クラウドにしてみれば青天の霹靂、予想だにしない言葉に、カッと頭に血が上る。
死者を冒涜する発言に聞こえてならなかった。
数々の物を与えて貰った自分ならばともかくとして、何故にあれだけ素晴らしい人間が自分などに惚れるというのか。
確かに自分達は親友だった。それは自分だけの思い込みではなかったと思う。
彼はそう何度も口にしたし、実際態度で示してきた。
だが、それと恋愛感情は別物だ。ザックスが自分なんかを好きだった訳がない。そんなはずはない。
 
「気付いてないも何も…!そんなはずないです!だってあいつはいつも!!」
 
 
 
「…いつも」
 
 
 
 
低く、穏やかな、けれど何処か威厳に満ちたその声に、クラウドは、思わず口を噤んだ。そうするだけの力が彼の声には含まれていた。
リョウはゆっくりと顔を上げる。赤茶けた髪の間から見えるその瞳は、何もかも達観した、ひどく大人びた色を帯びている。
「お前の事、応援してた。笑顔で送り出してた。」
自分の台詞を先取りされた事に酷く驚き、目を大きく見開いてその顔を見れば、リョウの口元に小さな笑みが浮かぶのが見えた。
「例え自分が相手の事を好きでも。
……それが、出来る位の奴だったとは、思わないか?」
微かな、見るものを全て凪いだ海のようにさせるような、穏やかな笑みで持って言われたその口調は、酷く静かで。
まるで耳が痛くなるほどの沈黙にも似た、不思議な響きを伴っていた。嘘だと、そう笑い飛ばせる空気など何処にもなかった。
頭が酷く混乱していた。掻き乱された思考が渦を巻く。
だが、そんなはずはないとの心の声は変わらず頭に響く。
それを証明するために起こるフラッシュバック。
思い出す。
セフィロスの元に行く時ののザックスの表情。かけられた言葉の一つ一つを。
 
 
 
 
 
 
『んーまぁ、暫くはいいわ。お前の世話でいっぱいいっぱい。』
 
そう言って、わざとらしく溜息を落としたザックス。
自分は何処か無理した口調を聞き逃していたとでも言うのか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『行って来いよ。仲直りは早いほうがいいぜ?』
 
そう言って、諭すように扉に親指の先を向けたザックス。
何処か無理した笑顔を自分は見ようとしなかったとでもいうのか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『なーに改まってんだよ。らしくねぇなぁ。
お前は気にせず、ラブラブしてくりゃいーんだよ。』
 
そう言って茶化すように笑ったザックス。
あの無邪気な軽愚痴は冗談として処理してしっかり聞こうとしなかったとでもいうのか。
 
 
 
 
 
 
 
そんなはずはない。そんな事あるわけない。
なぜなら、彼の紡ぐ言葉は一つとして不自然な物はなく、表情も何の違和感もなく、声音だって一度も震えはしなかった。
そうだそんなはずはないのだ。
リョウの言葉を否定する要素を頭の中で並べ立てる。
仮定に対する反論ははいくらでも出来る気がした。そんなはずはないと本気で食いかかってやりたいとすら思った。
 
 
 
あの、瞬間を思い出すまでは。
 
 
ただ、一度きりの不審行動。
ザックスらしくない一連の動作。
 
 
 
 
 
 
そして記憶が辿り着くあの瞬間。
 
 
 
 
 
『……ザックス?』
 
 
 
 
腕の中で発した不思議そうな声。
突然何の脈絡も無く、そう自分には何の必然性も無いと感じられた、あの瞬間自分が発したものだ。
ザックスに、抱きしめられた。
決して無理矢理にではない。
クラウドが逃げ出そうと思えばいつでも出来るよう十分考慮された力で緩くまわされた腕。
まるでクラウドの視線から逃げるように髪に埋められた顔。
お喋りな彼が織り成す不自然な静寂。
その瞬間。
その表情は?その声は?その仕草は?
 
 
 
肩が少しだけ震えたような気がしたのは、本当に気のせい?
 
 
後にも先にも抱きしめられたのはあれ一回だった。
あっけないほど簡単に腕から解放して、向けられた笑顔。
 
 
 
『ごめんごめん、ちょっと人肌が恋しくてサ。』
 
 
その瞬間、何処か空虚に感じられた瞳の意味は?
 
 
自分はいつだって、ザックスに頼ってばかりで。自分で一杯一杯で。
それでもザックスは笑ってくれた。窘めてくれた。叱ってくれた。
いつだって。どんな時だって自分が。
ザックスの優しさに甘えてばかりだった自分が、ザックスの信号を見落としたと?
実はザックスが自分の事を好きだったなんて。
そんな事。
そんなありえるはずもない事が。
あるのだろうか?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
全身の力が抜ける。手にしていた花束が乾いた音を立てて落下した。
ザックスを思い出させる明るい色彩の花弁が舞い、音も無く地面に降る。
 
「確かに…あいつから聞いた訳じゃない。俺が勝手にそう思っただけだ。
でも、俺はあいつの友人としてお前に知っておいて欲しいと思った。信じる信じないはお前の勝手だけどな。」
そこで、リョウは小さく息を吐いて。
真っ直ぐにクラウドを見詰めて。
「あいつは、お前に惚れてた。誰よりもお前だけを見ていた。」
何の揺らぎも無く、真っ直ぐに心に突き刺さる言葉に、愕然とする。
 
一つ一つ、思い出す。
 
あの瞬間の。あの腕の温もりを。あの仕草を。あの震えた肩を。
 
 
 
 
『あぁ、大丈夫だ。お前ら二人の親友である俺が保障する。』
 
 
 
 
 
笑っていた。彼は何時だって笑ってくれていた。
それが出来るだけの奴だった。それを選んでしまうような奴だった。
 
「…ザッ…ス…」
 
膝の力が抜ける。崩れ落ちて膝を付き、突き立てたバスターソードの刀身に手を伸ばす。
触れた指先は冷たいはずなのにまるで人肌のような温もりを感じられた。
まるで、気付かないうちに注がれていた無償の愛のように。
 
 
生きなくてはいけない。
 
 
唐突にそう感じた。
不器用にでも我武者羅にでも。
生きなくてはならない。
未だ嘗てない程強烈に、そう感じた。
生き抜いて、幸せにならなくてはならない、そんな気がした。
 
 
他の誰でもなく。
全てを犠牲にして愛してくれた、あの親友のために。
 
 
長い夜が漸く明けた様な気がした。
 
 
 








 

 
はい。
これで言葉シリーズ(いつの間にシリーズに?)は完結でございます。正真正銘完結です。
本当はここまで書くつもりはなかったのですが、一つ話を書くと次が思い付きって感じで連鎖してしまいました。
思いつきの連鎖とは恐ろしいですね。
 
クラウドに死を考えさせるのはセフィロスでも、生を考えさせるのはザックスで。
恋愛対象にはならなくても、掛け替えのない存在にかわりはなかった。
そう感じてくれれば幸いです。
 
 
報われないザックラを読んで下さってありがとうございました。(深々)