「こんな晴れた日に」




『3月18日 
依頼人:ルイ・ソフィア氏
依頼内容:飼い猫の捜索。
業務結果:近所を捜索するも見つからず。
家の中で泣き声が聞こえたため、家を捜索し洗濯機の中に入り込んでいる所を発見。』


「ほんっと人騒がせだよな…」
ルイ・ソフィア氏宅からの帰り道、クラウドは思わず呟いた
早朝4時にけたたましく呼び鈴を鳴らされて、何かと思えば、猫を探してくれときたもんだ
開店時間より相当早いが、何と言っても未だ軌道に乗り切れていない何でも屋。
仕事と時間を選んでいては生活もできない。
渋々起き上がり、猫捜索に繰り出したはいいが結果はこれだ。
朝の惰眠を返せと叫びたい気分だったが、空を見て気分が変わった。
青。澄み渡った空の色。
春の日差しはこの上なく柔らかく、全ての生物の上に平等に降り注いでいる
気分が良い。朝の純粋な空気を胸いっぱいに吸い込む。
機嫌もすっかり良くなって、業務報告書をの続きを書こうと手帳を開いた瞬間
ぽとり、と水滴が手帳に落ちてきた。
クラウドは眉を顰める。
確かめるように掌を上向けて、突き出した。
 
「……雨?」

見上げれば広がっているのは目眩を覚えるような青
 
 
 
 
 

不意に思い出した。
あの馬鹿な男の戯言

『こんな晴れた日はさ、何処に居てもお前と居る気がして、好きだな』

黒髪の青年はそう言って
笑った。

 
 
 
 
 
 
 

その手帳に付着した水滴が自らの瞳から流れ出ている事に気付いたのは、
インクが手帳に滲んでいるのに気付いた時だった。
こんな晴れた日に。何もかもが祝福されているようなこの透き通った日に。
涙が溢れるなんて。何の前触れもなく、突然溢れ出るなんて。
何て不釣合いな。何て場違いな。
…でも。
 
花弁を精一杯広げる黄色い花。
たわわに実る赤い果実。
生命力に満ち溢れた緑の草々。
 
視界に写るのは様々な彩色。春の日差しの下、色鮮やかに映える生命。
春の与える恵みに、何もかもが喜び沸き返っている。
そんな
人を悼むに、全くもって相応しくない
この、瞬間。
この、美しい時に。
たった一人。
あんたを偲んで泣くのも、いいかもしれない。
 
 
 
 
 
 






ホント何気ない一瞬でごめんなさい。
でも、こんな瞬間クラウドにはあるんじゃないかと思いまして。
本当に何気ない瞬間に、特別意識もしていないのに、突然涙が溢れてしまうってことが。
二人で、色んな場所にて、色んな時間を過ごしてきたから、何処で何をしていてもザックスを感じてしまう…みたいな。
…はい、すいません。ドリーマーの戯言でした(笑)

解る人には解る、某唄の影響受けまくりな作品でした。