クラウドが全身傷だらけで帰ってきた。
理由は喧嘩。そんなもん聞くまでもない。
「…またか?」
だなんて呆れ声で聞いてやれば
「向こうが悪い」
だなんてぶすっとした声が返ってくる。
それもいつもの事だし、俺はやれやれと言った感じで救急セットを持ってくる。
消毒液、包帯、バンドエード。すっかりクラウド専用となってしまったその救急箱の中身をザックスは切らした事がない。
食料品を買いに行くのと同じくらい自然に購入する癖がついた。
きっと悪ガキの母親ってこんな心境なんだろなって思って、俺はクラウドの母親かよだなんて自分に突っ込みをいれたりして。
…そういえば。
「お前故郷に居た頃もそんなに喧嘩してたのか?」
母親代わりになってる身としては、気になってしまう所。母親の苦労を思いやって聞いてみたりする。
バンドエードの紙を剥がしながら聞く俺に返ってきたのは無言の返事だった。
やっぱりな、だなんて思いながらバンドエードに向けていた顔を上げると、クラウドは全く感情のない瞳をしていた。
(……あ…ヤベ。)
出会った当初と同じ、その冷たい色。それはクラウドが人を拒絶するサイン。
最近俺は気付いた。こいつにとって故郷の話はタブーで、聞くべきじゃないってこと。
そう、こいつにとってあまり触れられたくない過去になっているってこと。
それを解っていたのに、問うてしまった自分の迂闊さに腹が立つ。
 
 
「…に、してもお前喧嘩下手だよな〜。」
 
 
話題を変えるために殊更明るい声を出す。
負けん気の強いクラウドが、下手、だなんて台詞聞いて黙ってる訳がない。
無表情と打って変わった怒りの表情で俺を見る。
怒られてるっていうのに、俺は何だかほっとした。やっぱりクラウドは何か感じてくれてるほうがいい。
何もかも押し殺したような、そんな瞳、俺はあんまり好きじゃない。
俺はにって笑って、拳を作る。
 
 
「…やってみる?」
 
だなんて。傷だらけの奴に言う台詞じゃねーっての。
それでもクラウドなら乗ってくるって解ってた。
勢い良く立ち上がって、
 
「上等」
 
だなんて。
オイオイ、売られた喧嘩をすぐさま買うその態度もちょっとは改めないとな。
まぁとりあえず今日教えるのは、うまい受身の取り方とか、
喧嘩しても傍から見たら解らないような所にだけ痣を拵える方法とかだ。
じゃないと、お前の悪評酷くなっちまうから。
 
 
世渡りが極端に下手なお前に、教える事はまだまだ一杯みたいだ。



友人関係成立直後位。
世話焼きザックス。生意気クラウド。こんなん好きです。
なんかあんま意味の無いお話でスイマセン。